日本人の健康を支える伝統食品である「納豆」。
納豆には血液サラサラ効果があり脳梗塞の予防に役立つ食品として注目されています。
近年の研究では、納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」という成分に血栓を溶かす働きがあることが明らかになりました。
血栓とは、血液中の血小板などが固まってできるかたまりのことで、動脈硬化や脳梗塞の原因になるため、できるだけ発生を防ぐ必要があります。
今回の記事では、納豆が、なぜ脳梗塞の予防に役立つのかを解説します。
納豆は飲んでいる薬によっては、食べられない場合があるため、食べ合わせの注意点もぜひチェックして下さいね。
ネバネバ成分「ナットウキナーゼ」が血栓を予防
納豆といえば、独特のにおいとネバネバして糸をひくのが特徴ですが、このネバネバに含まれる酵素が「ナットウキナーゼ」です。
納豆を食べると血液がサラサラになるといわれる理由は、このナットウキナーゼの血栓溶解作用によるものです。
ナットウキナーゼの3つの効果
ナットウキナーゼの最大の効果は、血栓を溶かすことですが、ほかにも、血圧やコレステロール値を下げる効果があり、脳梗塞の予防に役立ちます。それぞれの効果について、詳しく説明します。
1)血栓を溶かして血栓症を予防する効果
タンパク質分解酵素であるナットウキナーゼには、血栓の主成分であるフィブリンを分解する働きと、身体の中の血栓溶解酵素を元気にしたり、増やしたりする働きがあります。さらに、最近の研究では、血栓を溶けにくくする物質を分解して、血栓がより溶けやすくする働きもあることがわかりました。
このように、ナットウキナーゼは、血栓を溶かして、分解しやすくする働きによって、血栓ができることを防ぎ、脳梗塞などの血栓症を未然に予防する効果があります。
2)血圧を下げて高血圧を予防する効果
高血圧は、血管がかたくもろい状態になる動脈硬化の原因になります。血圧が上がることで、もろくなった血管が破れやすくなり、脳出血のリスクが高くなります。
ナットウキナーゼが、血栓を溶かしやすくすることで、高血圧を予防する効果があり、脳梗塞の予防にもつながります。
3)コレステロール値を下げて脂質異常症を予防する効果
血液中のコレステロールが多い状態は、脂質異常症や動脈硬化になりやすく、脳梗塞をひき起こす原因になります。
ナットウキナーゼには、コレステロール値を下げる作用があり、脂質異常症を予防する効果が期待できます。
毎日の健康維持にも役立つ!納豆の豊富な栄養素いろいろ
納豆は、煮大豆が納豆菌によって発酵する過程で、ナットウキナーゼをはじめ、タンパク質、ビタミン、ミネラル、うま味成分などさまざまな栄養素が作り出されます。
納豆の豊富な栄養素は、脳梗塞予防だけでなく、毎日の健康づくりにも大いに役立ちます。
納豆に含まれる栄養素と健康効果
タンパク質
筋肉や臓器から皮膚、爪、髪まで、人の身体すべてを作っている成分です。不足すると、体力や免疫力が落ちて、感染症などの病気にかかりやすくなります。
ビタミンK
出血を止める働きや、骨のカルシウム沈着(石灰化)をすすめて、じょうぶな骨を作る働きをします。
ビタミンB2
糖質、脂質、タンパク質などがエネルギーに変わるのを助けたり、肌や粘膜の健康を保つ働きをします。活性酸素の消去を助けて、動脈硬化などの生活習慣病を予防します。
ビタミンE
活性酸素を消去する抗酸化作用で、血液中のコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化になるのを防ぐ役割をします。
カリウム
体内の余分なナトリウム(塩分)を尿として排出し、血圧を下げる作用があります。
カルシウム
じょうぶな歯や骨を作り、骨粗しょう症を予防します。肩こりや腰痛、イライラするといった神経過敏を鎮める作用もあります。
マグネシウム
エネルギーの代謝を助け、動脈硬化を防ぎます。血管を広げて血圧を下げる作用もあります。
鉄分
鉄欠乏性貧血を予防します。不足すると、頭痛、動悸、食欲不振、疲れやすいなどの症状が現れる場合があります。
食物繊維
腸内環境を改善して、便秘や生活習慣病を予防します。
イソフラボン
体内で女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするため、更年期にみられる不調(更年期障害)を和らげる作用があります。骨粗鬆症の予防や脂質代謝の改善などにも有効に働きます。
納豆はいつ食べるのがいい?効果的な納豆の食べ方
納豆を食べることは、脳梗塞の予防や健康維持に良いことがわかりましたが、より効果を実感するために、いつ、どのように、どれくらい食べればいいのかを覚えておきましょう。
【食べるタイミング】夕食時がおすすめ
血栓を予防するためには、夕食時に納豆を食べるのがいいでしょう。
理由は、血栓ができやすいのは、深夜から早朝にかけての時間帯なので、夕食で納豆を食べることで、血栓の予防により効果を発揮しやすいからです。
【効果的な食べ方】加熱せずに食べる
ナットウキナーゼは、酵素なので、熱に弱い性質があります。
納豆からナットウキナーゼを効率的に摂るためには、加熱せず、そのまま食べるようにしましょう。
【食べる量】1日1パックが目安
納豆を食べる量は、1日1パック(30g以上)が目安です。
(四角いパックの納豆で40~50g、丸いカップの納豆で30~40g)
納豆30gを食べると、血栓分解産物(FDA)という血栓が溶けたときにできる物質が血液中に増加したという研究結果が報告されています。また、納豆の食べすぎは、エネルギーのとり過ぎや、栄養バランスの偏りにつながるため、1日1パックか、多くても2パックまでにしましょう。
食べ合わせに注意!ワルファリン内服中は納豆を食べないでください
残念ながら、納豆を食べないほうがいい場合があるので、注意して下さい。「ワルファリン(ワーファリン)」という抗凝固薬を飲んでいる人は、納豆のビタミンKが、ワルファリンの効果を中和してしまうので、服薬中は食べないようにして下さい。
納豆のほか、健康食品のクロレラ、青汁、抹茶などの粉茶(茶葉を濾して飲むお茶は大丈夫です)なども、ビタミンKを多く含んでいるため、ワルファリンの服薬中は食べないようにします。
ビタミンKは、ほうれん草、ブロッコリー、キャベツなどの野菜にも含まれますが、一度に大量に食べなければ、問題はありませんので、野菜については、あまり神経質にならなくても良いでしょう。
まとめ
納豆のネバネバ成分である「ナットウキナーゼ」は、血栓を溶かす効果と、高血圧、脂質異常症を予防する効果で、脳梗塞の予防に役立ちます。
納豆のネバネバやにおいが苦手な方は、納豆1パックに小さじ1程度の酢を入れてよくかき混ぜてみて下さい。納豆特有のネバネバとにおいが和らぎ、食べやすくなりますよ!
『1日1パックの夜納豆』を合言葉に、毎日の食事に納豆をとり入れて、脳梗塞の予防と健康度アップを目指しましょう。
参考書籍
医療ジャーナル社「脳梗塞の予防と再発防止」山口武典編
成美堂出版「栄養の基本がわかる図解事典」中村丁次監修
参考URL
http://j-nattokinase.org/nattokinase/
日本ナットウキナーゼ協会「ナットウキナーゼとは」
http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/nattokinase/
わかさの秘密「ナットウキナーゼ」
http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2017/009281.php
日本生活習慣予防協会「納豆はスーパーフード 脳卒中、虚血性心疾患の死亡リスクが低下」
この記事を書いた人 山田 由紀子 ( 管理栄養士 )
給食会社と病院に勤務したのち、結婚出産を経てフリーランスに転向。
病院や保健センターで、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い年代の方への栄養指導・食事相談を行う。
現在は、栄養関連記事の執筆、栄養監修、食生活アドバイスなどを在宅で行っている。