脳梗塞が起こってしまったら、再発を繰り返さないためにも食事でも気を付けて頂きたい項目がいくつかあります。その中でも、塩分の管理をして血圧のコントロールをしていくことは重要なポイントの1つです。
普段から濃い味を好む方はもちろん、薄味を心がけている人も、なぜ塩分制限が必要なのか、確認していきましょう。
塩分ってどんな役割があるの?
食べ物の栄養素は大きく5つに分類されています。炭水化物は脳と体のエネルギーになる栄養素、脂質は体の熱やエネルギーになる栄養素、タンパク質は筋肉を作る栄養素、そしてビタミンとミネラルは体の調子を整える役割があります。
その中で塩分を構成するナトリウムは、必須ミネラルの1つで、以下のような様々な役割があります。
- 体液の塩分濃度を調整
- 体のPHの調整
- 他の栄養素の消化・吸収のサポート
- 筋肉の動きと神経伝達のサポート
塩分は体にとってなくてはならない栄養素の1つなのです。
なぜ塩分制限を行う必要があるの?
塩分には水分を保持する力があります。それは、塩分の働きの中で体液の塩分濃度を調整するのに必要な作用ですが、塩分を摂りすぎた場合には全身の血液量が増え、血圧が上昇します。血圧の上昇は、血管の壁を硬くさせることに繋がり、その状態は動脈硬化と呼ばれます。
動脈硬化が進行すると、血栓と呼ばれる血液のかさぶたのようなものができ、それが血液中に流れて、脳で詰まった状態が脳梗塞です。つまり、脳梗塞を発症させないためには、塩分の摂取量には気を付け、動脈硬化を進行させないことが重要です。
塩分をどのくらいに控えたらいいの?
高血圧の予防のためには、1日の塩分摂取量を6g未満にすることが推奨されています。
平成28年に厚生労働省が行った調査では、日本人の1日の塩分摂取量は男性が10.8g、女性が9.2gでした。このため、一般的には1日辺り3~5g近くの塩分制限が必要になります。
ただ、年齢、体格、糖尿病や腎臓病などの合併症の有無などによっても塩分量の制限は異なっています。病院で指示された塩分量が10gなのであれば、それは超えないようにしていきましょう。平均摂取量は10g前後ですが、それを多く超えて摂取している人もいるため、まずは自分の塩分摂取量を把握することが大切です。
塩分を控えるポイントは?
塩分を控えるためには、一般的な調味料の塩分量を把握しておくことが大切です。醤油は大さじ1杯で塩分量は2.2gとされています。大さじ1というのは、刺身や餃子などを食べる際に小鉢に出す量がほぼその量に値します。
家庭の味噌汁の塩分量は約1.5g、ハム、チーズ、ウィンナー、練り物製品など、加工品については1つ食べたら0.5g程度と考えてみてください。食パン0.5g、総菜系のパンは1g、麺類は汁まで飲むと6gを超えるものがほとんどです。主食では唯一塩分が含まれていないのは、ご飯です。ご飯食の回数を増やすことは減塩対策になるでしょう。
家庭の味噌汁 | 1.5g程度 |
ハム、チーズ、ウィンナー、練り物製品などの加工品 | 0.5g程度 |
食パン | 0.5g程度 |
総菜系のパン | 1g程度 |
麺類は汁まで飲む | 6gを超える |
調味料を減らすだけでは、味が物足りなくなってしまうこともあるので、香味野菜やわさび、生姜、唐辛子やラー油、胡椒やカレー粉などのスパイスをうまく使って味付けをしてみてください。
コンビニやスーパーでお惣菜などを買う場合には、塩分表示を見るようにしましょう。塩分表示ではなく、ナトリウム表示の場合には計算が必要ですが、複雑ではないので、覚えておくといいでしょう。ナトリウム400mg=塩分1gに相当します。ナトリウム1000mgのものは、塩分2.5g、ナトリウム1.6g(=1600mg)は塩分4gになります。
外食やお惣菜では味をしっかりつけていることが多いので、追加の調味料を使わない、汁物は1日1回まで、漬物は半分残す、といった工夫をしていくようにしましょう。
塩分を摂りすぎた時はどうしたらいい?
塩分の摂りすぎは1日だけで問題になるわけではありません。一週間を目安に塩分の量を調節して、過剰に摂取してしまう日が続かないようにしていきましょう。
また、塩分を摂りすぎた食事の時にはカリウムという栄養素を摂ることもお勧めです。カリウムはナトリウムと同じ、必須ミネラルの1つですが、塩分を排出してくれる働きがあります。
カリウムは果物や野菜、肉や魚など、様々な食品に含まれています。しかし、肉や魚は結局味付けをしないと食べられません。また、カリウムは水に溶けやすいという特徴があるので、野菜は煮たり茹でたり、水にさらすと、カリウムが減ってしまうことがあります。そのため、塩分を摂りすぎてしまった時には野菜をできるだけ生の状態で食べることと、果物を食べることを心がけてみてください。
まとめ
元々濃い味が好きな人にとっては、塩分制限は難しいことかもしれません。ただ、味付けは1カ月も続けると慣れてくると言われています。まずは自分の塩分摂取量を把握して、目標塩分量に近づけるように少しずつ努力して、脳梗塞の再発が起こらないようにしていきましょう。
ayu ( 管理栄養士 )
病院の食事を作る給食委託会社に就職後、 病院の入院患者様の栄養管理を経て、現在はクリニックにて、栄養指導を行っています。
現在は月に200人近くの方とお話ししており、その方の生活スタイルに合わせた話を行っており、患者さんの多くがリピートしてくださっています。
脳梗塞の発症や再発を防げるように、食生活についての情報提供を行っていきます。
趣味:旅行、食事、スポーツ