脳梗塞の再発防止に本人、家族が出来ること

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軽い脳梗塞の入院期間や後遺症・退院後について

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脳梗塞は、発症した方が皆さん必ず麻痺などの重い後遺症が出るわけではありません。
重度の脳梗塞があると同時に、軽い脳梗塞というのも存在しているのです。
そこで今回は、比較的軽い脳梗塞を発症した場合の入院期間や後遺症、そして退院後に注意していただきたい点について解説します。

そもそも、軽い脳梗塞ってどういう状況?

脳梗塞が軽いか重いかどうかを測る一つの目安として、「どの部分の血管が詰まってしまったのか」があります。
脳梗塞は、脳の中の血管が血の塊などによってせき止められてしまう病気です。そのため、血管の中でも大きな血管が詰まってしまうと、症状も重くなり、逆に小さな血管であればそれだけ症状も軽くなります。

中には、一時的に血管が詰まってしまうことで症状が出現するのですが、自然にその詰まりが解消することで、症状も消えてしまうことがあります。これは、一過性脳虚血(きょけつ)発作(通称TIA)と呼ばれる状態であり、脳梗塞のまさに一歩手前である、といえます。よって脳梗塞を麻痺などの症状が出現する病気であるとするならば、一時的であれこういった症状が出るTIAもまた、軽い脳梗塞であるということもできます。

看護師としては、症状の軽い重いに関係なく、たとえ一時的であっても麻痺やしびれ、言葉の出にくさなどを感じた場合はすぐに病院を受診されることを強くお勧めします。

 

入院期間は?

いくら軽いとはいえ、脳梗塞を発症しているとわかった場合は、ほぼ必ず入院となります。その期間の目安としては、どんなに短かったとしても1週間以上となります。

一時的なもので症状がすぐに消失したとしても、入院後はどの部分に脳梗塞が起きているか、そしてなぜ脳梗塞が起きたかを詳しく検査します。
検査と同時に、再び脳梗塞を起こさないようにするため、血液をさらさらにする薬や脳を保護する薬、脳のむくみを抑えるお薬など、その方の状態に合わせて様々な種類の点滴治療を行います。

たとえ軽い脳梗塞であったとしても、脳梗塞は再発してしまうリスクがとても高いといわれています。そのため私の病院では症状の程度に関わらず、脳梗塞を発症された方は最低でも3日間は脳卒中専門の集中治療室へ入室していただき、看護師が24時間監視することで、万が一に備えています。

 

後遺症にはどういったものがあるの?

脳は、人間が生きる上での司令塔です。そのため、軽い脳梗塞といっても、脳のどの部分に、どれくらい梗塞が起きたのかによって、症状は大きく異なります。

よく脳梗塞と言われると麻痺やしびれ、といった症状を思い浮かべる方が多いのですが、それ以外にも脳梗塞による後遺症は多岐にわたります。
私がこれまで看護師として対応した後遺症には、麻痺やしびれ以外にも、言葉が話しにくい、食べ物を飲み込みにくいといった症状がありました。
また、意外に思われる後遺症としては、視野が狭くなる、新たに記憶することが苦手になる、文字を読みにくくなる、といったものがあげられます。例えば視野が狭くなる後遺症では、例えば食事中ならば右半分のみが認識できるため、左半分に気付くことができなくなってしまいます。

麻痺やしびれなどは周囲の方も一目で困っていることがわかるため、お手伝いもしやすいのですが、こういったものの見え方や記憶といった脳梗塞の後遺症では「なんでできないんだろう?」「ふざけてやっているのだろうか?」などと思われてしまい、後遺症と気付いてもらえないことが多くなっています。こういった身体的な後遺症以外の、はたから見ると軽くみえてしまう後遺症によって日常生活に支障をきたし、苦しんでいる患者さんも大勢いらっしゃるということを、ぜひ知っていただけたらと思います。

 

症状が改善したとしても、リハビリは継続が大切

脳梗塞で起こった後遺症を改善させる治療法は、リハビリです。リハビリはすればするほど機能が回復する、というものではありません。

脳の機能は一度失ってしまうと、それを回復させることはできないため、代わりにリハビリによってダメージを受けた部分の周囲の脳を活性化させて、失った機能を補えるようにする必要があります。そして、一度補えたから終わりではなく、そのリハビリを継続させることで、機能を維持させることができるようになります。

以前、脳梗塞によって右半身に軽度の麻痺が残った方がいました。この患者さんはリハビリに一生懸命取り組まれたため、最終的には自転車に乗っても差し支えないほど症状は改善しました。しかし、この話には続きがあります。

その方が脳梗塞を発症して数年後、今度は心筋梗塞を患ってしまいました。
心筋梗塞の治療によって数日間ベッド上での安静が必要となってしまったことで、筋肉が急速に衰えてしまい、治療を終えて退院される時には車いすに自分で乗ることもままならない状態となってしまいました。

このように、リハビリによって機能が回復したように見えていても、リハビリが中断されてしまうことで症状がより深刻になってしまうこともあります。
そのため、たとえ症状が改善したとしてもリハビリを継続して行うことが大切です。

 

退院後の継続的な通院を!

軽い症状で済んだ脳梗塞であっても、再発する可能性はとても高くなっています。
よって退院後も継続的に通院をして、新たな脳梗塞が起こっていないかどうかチェックし、血管や血液がこれ以上詰まりやすくならないようにお薬や日々の生活習慣で調整していくことが、とても大切です。

実際に軽い脳梗塞を起こした患者さんが退院後に通院をさぼってしまった結果、数か月後に重度の脳梗塞を再発させてしまったケースを、私は何例も目にしてきました。その患者さんたちは皆さん口をそろえて「あの時ちゃんと通院していれば、こんな大きな脳梗塞を起こさずに済んだかもしれなかったのに」と後悔の気持ちをおっしゃっていました。

人間の体内にある血管は、本来ゴムのようにしなやかです。そして本来は血液も、多少食べ過ぎてしまっても常に細かい血管でもスムーズに通れるように、サラサラの状態を維持しています。

しかし、どんなに軽いといっても一度脳梗塞を起こしてしまったということは、他の脳の血管も詰まりやすい状態であるとともに、血液も固まりやすい、まさに危険な状態であるといえます。

重い脳梗塞は、自分のその後の人生を大きく変えてしまいます。
よって軽い脳梗塞で済んだことに対して、「後遺症がなかった」と安心されるとともに、「今後はもっと重い脳梗塞を起こしてしまう可能性がある」ことを常に意識していただいた上で、定期的な通院および生活習慣の改善を心がけていただければと思います。

私自身、脳梗塞の方を対象としている脳神経科の看護師であるとともに、脳梗塞を発症した親がいる、患者の家族でもあります。

親を通して改めて感じたのが、脳梗塞を発症した後の生活改善の大変さです。
お塩を減塩のものにする、定期的に運動をするなど、少しでも再発を防ぐための方法を伝えているのですが、実際には継続できていないことが多くあります。病院へは定期的に行っており、状態は悪化していないとのことだったのでその点は安心しているのですが、またいつ再発するかはわかりません。

皆さんもぜひ、軽い脳梗塞で済んだからと油断せず、「いつ再発するかわからない」ということを常に念頭に置いた上で、少しでも再発するリスクを減らすために、継続した行動をとっていただければと思います。

 

この記事を書いた人 山村 真子( 脳神経外科の看護師 )

看護短大を卒業後、大学病院・総合病院へ計10年間勤務。脳神経科には3年間勤務し、様々な脳梗塞患者さんの看護に従事してきた。脳神経科以外にも、循環器科や総合内科など、様々な診療科での経験を積み、今に至る。

現在はこれまでの看護師の経験を生かし、「根拠に基づいた確実な情報を、わかりやすくお伝えする」をモットーに、看護師ライターとして活動している。

 

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