〜「トイレ」と「車椅子への乗移り」のお悩みに役立つ福祉用具〜
福祉用具は使い方が大事
福祉用具を使ったことがありますか?福祉用具は直接お店などで目にする機会も少ないので「使ってみたいけど、どう選んでいいかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
現在では介護保険を利用してレンタルできる福祉用具も多くなっており、身近な存在になっています。
一方で私が訪問リハビリでご利用者のご自宅を訪問していた時には、使われなくなった福祉用具が自宅の隅で眠っている・・・なんてことも多くありました。
福祉用具を有効に活用するためには、購入やレンタルするだけでなく自分の生活にあったものを選び、使い方を工夫することが大事です。
訪問リハビリでも、福祉用具の使い方のコツをお伝えするだけで、普段から使っていただけるようになったこともありました。
今回の記事では私が訪問リハビリを行っていた時に、ご利用者からよく相談されていたトイレと車椅子への乗移りについて、福祉用具の具体的な使い方についてご紹介していきます。
生活の中に福祉用具を取り入れる方法がイメージできると思いますので、最後までお読みいただけると嬉しいです。
トイレの悩み!福祉用具で排泄の失敗を減らしたい
在宅生活の中でも、トイレに関する悩みはとても多いです。
トイレに間に合わず衣類やシーツを汚してしまうなど、排泄の失敗はご本人の気持ちを傷つけるだけでなく、介護者の負担も大きくなります。
今回は排泄の失敗を減らすために、ポータブルトイレの活用を考えてみましょう。
ポータブルトイレとは、寝室や居室で使用できる持ち運び可能なトイレのことです。トイレの使用が難しかったり、トイレまで遠くて間に合わなかったりする方が使います。
ポータブルトイレを選ぶポイント
ポータブルトイレにもいろんなタイプがあります。
出典:パナソニック
家具調のタイプ
出典:パナソニック
ポータブルトイレを選ぶときは、見た目や大きさなどが大切なのはもちろんですが、是非考えてもらいたいのが、介護をする方が使いやすいかという点です。
一般的に家具調のポータブルトイレは見た目が重厚な分、重さもありますので高齢の介護者が動かせない、ということがあります。
そのような場合には同じ家具調の中でも車輪が付いているタイプにしたり、軽量なものを選んだりしましょう。
ポータブルトイレは使った後、排泄物の処理が必要になります。
排泄物を入れるバケツが付いているものが多いので、バケツを持ち運びやすいかどうかもチェックしておきましょう。最近ではバイオチップを使って排泄物を分解するポータブルトイレもあります。
トイレの方法は時間帯や介護者の状況に合わせて柔軟に考える
トイレの方法を1つに決めてしまう必要はなく、時間帯などで複数の方法を考えておくと本人、介護者ともに負担を減らすことができます。
日中は元気に動くことができていても、夜はふらつきがひどいという場合や夜は介護者がゆっくり休みたいという場合があるでしょう。
その場合、日中はリハビリも兼ねて自宅内のトイレを使用し、夜は寝室にポータブルトイレを置くという方法も良いでしょう。
ご自宅の状況によっては、寝室の位置をトイレの近くに変えたり、室内のベッドの位置や向きなどレイアウトを変えたりすることで、トイレまでの移動がよりスムーズに行える場合もあります。
ポータブルトイレと一口に言っても、種類や使い方も様々です。値段だけでなく自分たちの生活に合わせて、使いやすいものを選んでいただければと思います。
ポータブルトイレは衛生上、購入前にお試しができない場合がほとんどです。しかし実際の使用はせずとも試しに座ってみたり、部屋に置いて大きさを見たりしたい場合は、福祉用具レンタル事業所から借りられる場合もありますので、購入前にケアマネージャーや福祉用具専門員に相談することをお勧めします。
車椅子への乗移り!楽にして自宅内での行動範囲を広げたい
ベッドから車椅子への乗移りも介護量が大きく、難しい動作の一つです。
ついつい億劫でベッド上の生活になりがち・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしベッド上生活は刺激が少なく、生活のリズムが崩れたり、体力がさらに低下したりすることにもつながります。
今回は車椅子への乗移りをしやすくする方法として、介護用電動ベッドを中心にご紹介します。
介護用電動ベッドの使い方のポイント
介護用電動ベッドには2モーターや3モーターなど、種類の違いがあるのですが、一般的には背上げ機能や高さ調節機能がついています。これらの機能を使うことで車椅子への乗移りを楽にすることができます。
車椅子への乗移りで介護者に負担がある動作の一つが、ベッドに座った状態から、立ち上がらせることです。
立ち上がる前に介護用電動ベッドの高さを少し高くすることで、立ち上がりを楽にすることができます。
というのも立ち上がりに必要な介護量は、座面の高さ(座っているベッドの高さ)でずいぶん違ってくるからです。一般的に座面が高い方が立ち上がりやすくなります。これは高い椅子と低い椅子の、どちらから立つ時がやりやすいかを比べてみると一目瞭然です。
ただし足がつかない高さになると危険ですので、足が浮いていないかどうかを必ず確認してください。
適切な高さは乗り移る先(車椅子やポータブルトイレ)の座面の高さと同じか、少しだけ高くするようにしましょう。
介護用電動ベッドと他の福祉用具との合わせ技
介護用電動ベッドと他の福祉用具の組み合わせにも注目してみましょう。
介護用電動ベッドを使う時に必ず一緒に使うものがあります。
マットレスです。
マットレスを意識して選ばれていますか?
私の経験ではベッドをレンタルしている方でも、マットレスの機能を意識している方はほとんどいませんでした。
実はマットレスにはいろんなタイプがあり、その方の状態や目的によって選ぶことが大切です。
いわゆる高機能といわれるマットレスは床ずれ予防のために、柔らかくフワフワしていることも多いです。そのようなマットレスは床ずれ予防には良いのですが、フワフワしているためにかえって動作がしにくくなることもあります。
自分である程度動けて床ずれの心配がないような方は、もう少し硬めのウレタンなどのマットレスを選ばれると寝返りや立ち上がりなどの動作がしやすくなります。
またベッドからの立ち上がりをスムーズにするために、移乗バーというベッド柵につける手すりや、天井に突っ張り棒のようにして固定することができる手すりもあります。
移乗バー(介助バー)
出典:パラマウントベッド
突っ張り式の手すり
介護用電動ベッドと合わせて、こういった手すりを利用するのも良い方法だと思います。介護度にもよりますが、このような手すりは介護保険の枠内でレンタルすることができます。福祉機器をレンタルするには、ケアマネージャーにケアプランを見直してもらう必要がありますので、担当のケアマネージャーに相談されると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回の記事ではトイレと車椅子への乗移りを中心に、福祉用具をご紹介してきました。福祉用具も道具なので、選び方や使い方でお役立ち度がグンと変わってきます。ぜひ今回の記事を参考にしたり、福祉用具専門員やケアマネージャーなど専門職に相談をしたりして、ご自分にあった使い方をしていただければと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
mocoss ( 作業療法士 )
2007年に作業療法士免許取得。その後救急病院、リハビリテーション専門病院、行政(介護予防事業)での勤務を経て、在宅の高齢者や障害者への訪問リハビリテーションに従事する。
特に脳卒中患者の在宅復帰を多く支援してきた。ボランティアとして、片麻痺患者がセラピストの教育に携わるためのNPO法人に所属している。
趣味は旅行。