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脳梗塞の再発予防

サウナが原因で脳梗塞に

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疲れを癒すため、サウナでたくさん汗をかくという習慣がある方もいらっしゃるかと思います。
しかしこのサウナ、適切に使わないと脳梗塞をはじめとした深刻な病気を引き起こしてしまう恐れがある、ということをご存じですか?
今回は、脳梗塞とサウナの危険な関係について、ご紹介します。

 

某親方が倒れた原因も、サウナによる脳梗塞!?

以前あった、相撲部屋の親方がサウナの帰宅中に意識を失って転倒し、一時意識不明の重体に陥った、というニュースを覚えている方は、多いのではないでしょうか。報道では「脳の病気で手術をした」という発表しかないためあくまで推測となりますが、看護師である筆者は、当時親方はサウナによって脳梗塞を発症したのではないか、と考えています。

ではなぜ、サウナによって脳梗塞を発症したと考えたのか、その理由を2つご紹介します。

大量の汗をかくことで「脱水」になる

サウナの魅力の一つとして、高温多湿である場所にいることでたくさんの汗をかく爽快感があげられます。確かに適度にサウナに入り、汗をかくと気分もすっきりしますし、何よりサウナ後のビールは格別です。

しかし、サウナによって大量の汗をかくということは、それだけ身体の中の水分を減らしているということを意味しています。
サウナが好きな方の多くは「ギリギリまで我慢して、大量の汗をかくこと」を好まれるのですが、この汗の原料となっているのは、血液の中に含まれている水分です。つまり、大量の汗をかくということは、それだけ血液の中に含まれている水分を外へ出しているということになり、血液がドロドロになりやすいということを示しているのです。

若い方であれば、血液中の水分量は多いため、たくさん汗をかいても適度に水分を補給すれば問題ありません。しかし、年を重ねると、高血圧や糖尿病など、血液や血管に悪影響を及ぼす病気を持っている方が多くなります。

そういった方が大量の汗によって血液中の水分を外に出すと、血液がドロドロになってしまうのです。この時、適度に水分を補給できればよいのですが、年を重ねれば重ねるほど、人は喉の渇きを感じにくくなってしまうため、若い方であれば喉が渇いてしょうが無いほど脱水が進んでいても、喉の渇きに気づかず、適切な水分摂取ができないケースが多くなります。その結果、血がドロドロに鳴りすぎて固まってしまい、脳内の血管を詰まらせてしまうことで脳梗塞を発症してしまう可能性があるのです。

ヒートショックによって、血圧が大きく上下した

人の血管は、元々ゴムのように弾力性があり、外の温度の影響を受けやすい部分とされています。
暑ければ血管は広がって血液が多く流れるようにして、汗によって失いやすい水分を全身により多く送れるように調整しますし、逆に寒くなれば血管を狭くして、必要以上に体温が奪われないように調整しています。

一方、サウナは、常に高温多湿にたもたれています。
夏ならば外も暑いため、それほど大きな温度差にはならないのですが、冬など外が寒い場合、サウナでの高温状態から一気に外の冷たい環境になることで、血管は短い時間で拡張と収縮を繰り返すことになります。この動きは血管にとってとても負担の大きいため、血液の流れが悪くなってしまい、その結果血の塊が脳内につまり、脳梗塞を引き起こしてしまいます。

このように、サウナは「脱水」と「ヒートショック」によって、脳梗塞がひきおこされやすい病気となっています。

 

サウナが大好きなAさんが、脳梗塞を発症するまで

ここで、筆者が脳神経科に勤務中に経験した患者さん例をご紹介します。皆さんにも、こういった症状はありませんか?

(この症例は患者さんの特定を避けるため、一部事実とは異なる情報を含んでいます。あらかじめご了承ください)

Aさんは60代、サウナは昔から大好きで、定年後は週に3回は近所の温泉施設へ通っていました。仕事をしているときから高血圧と指摘されており、今は奥さんの協力で食事もお塩を控えてもらっているほか、スポーツジムに通って水泳や筋肉トレーニングを行っており、健康には気を遣っていました。

しかしある時、いつものようにサウナへ入っていると、突然手にしびれを感じました。「なんだろう?これ」と気にしていると、数分も経たないうちにそのしびれはとれました。「気のせいだったのかな?疲れかな」とあまり気にしていませんでしたが、それからは数日に1度程度、しびれを感じるようになりました。気になったAさんは整形外科を受診し、肩などに異常がないかを調べてもらいましたが、整形外科ではとくに異常は見られませんでした。

不思議に思っていたAさんが、いつものようにサウナへ行こうと暖かい家から雪のまじる外へ出た瞬間、突然右半身全体に強いしびれを感じました。右半身を動かそうと思っても全く動かすことはできず、慌てて奥さんを呼ぼうとしましたが、うまく言葉もでてきません。Aさんの場合はたまたまお隣の方がその様子を見ており、すぐに奥さんを呼ぶとともに救急車を要請してくれました。

そして筆者が勤務していた病院に救急搬送され、検査の結果重度の脳梗塞だとわかりました。

懸命の治療が行われましたが、Aさんには重度の右半身麻痺がのこってしまい、これまでの生活を大きく変えなくてはいけなくなってしまいました。

このケースでポイントとなる部分、それは「サウナ中に感じていた手のしびれ」です。実はこれが、脳梗塞を引き起こすきっかけになっていたかもしれないんです。

 

脳梗塞=そのまま意識が飛ぶ、だけではない!

「一時だけ手がしびれた」「目が見えにくくなったことがある」といった症状。これらも実は、脳梗塞の初期症状といえるものなんです。

脳梗塞とは、脳内の血管が血の塊によって塞がれる病気です。しかし中には、脳の血管が一時的に塞がったものの、その後自然と血液の流れが復活することもあります。それが、先ほどあげたような「一時だけ手がしびれた」「目が見えにくくなった」といった症状を引き起こしていた可能性があるのです。こういった症状は「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれるもので、この時点で適切な治療を受けることができれば、脳梗塞の発症リスクを大幅に減らせることができるといわれています。

しかし現実には、TIAの状態で病院を受診する方は非常に少なく、なかなか脳梗塞の発症を防ぐことができていないのが実情です。筆者が脳神経科に勤務している間、毎月数十人の脳梗塞患者さんが運ばれてきている一方で、TIAの方は数ヶ月に1件あるかないか、という状況でした。そして、TIAの時点で治療を受けられた方に対し、医師は「あなたは本当に運が良かった。このまま放っておいたら、そのうち重篤な後遺症を引き起こす脳梗塞を発症していたかもしれないよ」とその都度話していたことが、とても印象的でした。

 

まとめ

サウナは、若い方というよりも、むしろ中高年の方に人気が高くなっています。一方で、中高年の方は若い方に比べて血液がドロドロになりやすく、その結果脳梗塞を引き起こしてしまうリスクも高いと言わざるを得ません。また、脳梗塞以外にも、サウナを過度に使うと、心筋梗塞や脳出血など、命に関わる病気を引き起こす可能性もあることから、十分注意が必要です。

ぜひ、サウナをこれからも楽しむために、使用は「ほどほど」にしていただくとともに、サウナ後のビールのためにギリギリまで我慢するのではなく、適度に水分を補給していただければと思います。たったこれだけで、脳梗塞などの発症率を大きく低下させることができます。

 

この記事を書いた人 山村 真子( 脳神経外科の看護師 )

看護短大を卒業後、大学病院・総合病院へ計10年間勤務。脳神経科には3年間勤務し、様々な脳梗塞患者さんの看護に従事してきた。脳神経科以外にも、循環器科や総合内科など、様々な診療科での経験を積み、今に至る。

現在はこれまでの看護師の経験を生かし、「根拠に基づいた確実な情報を、わかりやすくお伝えする」をモットーに、看護師ライターとして活動している。

 

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