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脳梗塞の点滴の治療期間と回復について

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脳梗塞を発症すると、まず行われるのが点滴による治療です。

脳梗塞は点滴治療を24時間継続して行うケースがほとんどなので、患者さんの負担が大きい治療といえます。

そのため、「いつこの治療が終わるのか」「どんな内容の点滴が入っているのか」など、点滴治療について不安に感じている方も多いかと思います。

今回は、脳神経科の看護師が脳梗塞の点滴治療について、解説していきます。

点滴の種類

脳梗塞を起こした方に対して行われる点滴は、一種類ではありません。

脳梗塞に有効とされる点滴の種類は複数あり、それぞれの状態に合わせて、点滴の種類を組み合わせることで、治療を進めていきます。

それでは、脳梗塞の治療で使われる点滴の種類について、ご紹介します。

 

血栓溶解薬

血栓溶解薬はその名の通り、血管に栓をしてしまっている血の塊(血栓・けっせん)を直接溶かす効果のあるお薬です。

「血液の塊を溶かすことができるのならば、脳梗塞を発症しても全員きれいに治るはずじゃないか」と思われるかもしれません。

この血栓溶解薬には、発症から4.5~6時間以内に使うことが原則となっており、それ以降では、この薬を使って治療することはできません。

なぜ、こんなに厳しい制限がついているのでしょうか。

それは、脳という部位に理由があります。

脳は体全体の司令塔です。

全身に司令を送るためには、常にたくさんの新鮮な酸素や栄養を必要とします。

しかし脳梗塞によって血液が行きわたらなくなると、血管が詰まった部分の脳は正常に働くことができなくなってしまうのです。

このとき、4.5~6時間以内に血栓溶解薬を使用することができれば、再び血液を行きわたらせることができ、劇的な症状の改善を見込めます。

しかし逆に4.5~6時間以上たってしまうと、血管が詰まった部分の脳は完全に機能を失ってしまうため、たとえ血液の流れが戻ったとしても、症状の改善は見込めません。

そのため、4.5~6時間という制限がついているのです。

よく「脳梗塞は発症したらすぐに病院へ」と言われています。

それは治療開始が早ければ早いほど、血栓溶解薬を使える可能性が高くなり、劇的に症状を改善させることが見込めるためなのです。

 

抗血小板薬

抗血小板薬とは、出血時、血を固めて出血を止める、血小板の働きを抑えるお薬です。

そのため、血液が固まりにくくなるため、脳梗塞の再発を防ぐ効果が期待できます。

抗血小板薬は、投与される薬の種類にもよりますが、発症後48時間以内に開始するとよいとされています。

 

抗凝固薬

抗凝固薬は、血小板が固めた血液をさらに強固に固める働きを持つ、凝固因子という物質に働きかけることで、抗血小板薬同様に血液を固まりにくくさせるお薬です。

抗凝固薬は抗血小板薬に比べると、実際に治療で選択される頻度は少なくなっています。

 

脳保護薬

脳保護薬は、その名の通り脳梗塞によって傷ついた脳を保護する働きを持つお薬です。

脳保護薬は脳梗塞発症後24時間以内に開始することで十分な効果を期待できます。

一方で、続ければ続けるほど脳が回復する、というお薬ではなく、あくまで傷ついた脳を保護するというお薬のため、十分な効果が得られる期間とされる14日以内が投与期間と決められています。

 

抗脳浮腫薬

抗脳浮腫薬とは、脳のむくみを軽減させるお薬です。

脳梗塞の中でも特に大きな血管が詰まってしまい、広範囲にわたって脳がダメージを負ってしまうと、脳は通常よりもむくんでしまいます。

脳がむくんでしまうと頭の中の圧が強まり、脳全体を圧迫してしまうため、より重い症状が出る恐れがあります。

そのため、脳梗塞の中でも特に重度の場合、抗脳浮腫薬を使って脳のむくみをとる治療が行われます。

 

このように、脳梗塞の治療には様々なお薬を組み合わせて治療を行っています。

なお、今回ご紹介したお薬のほかにも、

  • 糖尿病や高血圧など、様々な持病に対する治療
  • 食事がとれない場合の栄養&水分補給目的

といった場合は、脳梗塞の治療とは別に、それぞれに合った点滴治療が行われます。

 

点滴はいつまでするの?

脳梗塞での点滴治療は、脳梗塞の部位や程度によって、個人差があります。

そのため、脳梗塞の治療では点滴は〇日までです、と明確にお伝えすることはできません。

しかし、どれくらいの期間点滴治療を行うのか、大まかな目安はあります。

それが、「発症後約1週間」です。

点滴治療中は動きが制限されるほか、点滴のルートを常に気にしながら生活しなくてはいけないため、患者さんにとって負担の大きな治療法の一つです。

そのため、「早く外してほしい」という気持ちはとてもよくわかります。

点滴は血管に直接針を刺して行うため、感染のリスクなどを考えるとなるべくなら避けたい治療法です。

しかし、点滴しか治療法がない場合、そして点滴の方がより効果が確実に得られるなど、感染や不自由さといったデメリット以上に、点滴治療のメリットが上回るときに、点滴治療を選択しています。

不自由なことも多いかと思いますが、「今は点滴が必要な時期なんだ」と考えていたただければと思います。

 

点滴 効いてない?

脳梗塞の患者さんの中には、

「点滴をしているのに症状がどんどん悪くなっている。点滴が効いていないのならば、こんな無駄な治療をしたくない」とおっしゃる方もいます。

確かに、脳梗塞は発症直後から数日間に症状がより進行するケースも珍しくないため、患者さんがそう感じてしまうのも無理はありません。

脳梗塞に対して有効な治療は、早く始めれば始めるほど選択肢が増える、と先ほどお話しました。

時間にすると、発症後4.5~6時間以内に治療を始めなければ、脳梗塞に対して最も効果が高いとされる、血栓溶解薬を使うことはできません。

治療体制が整っている病院であり、発症後8時間以内であれば、点滴による治療ではなく、血管内にカテーテルを通して直接血の塊を取り除く、脳梗塞のカテーテル手術を受けることもできます。

しかし発症後8時間以上経過していたなどの理由により、血栓溶解薬、カテーテル手術のどちらも受けられなかった場合は、「これ以上の悪化を防ぐための治療」が行われ、「今起きている脳梗塞そのものへの治療」はできないのが現状となっています。

点滴治療を受けていても、効いていないと感じている場合は、むしろ「これ以上悪化しないという治療効果はある」ということも同時に意味しています。

私はこれまで100名以上の脳梗塞患者さんを受け持ってきましたが、そのうち残念ながら数名の方が治療中に脳梗塞を再発してしまいました。

主治医曰く、「血栓溶解薬やカテーテル手術をたとえ受けられなくても、早く点滴治療を開始することで、再発率はうんと下げることができる。多くの点滴治療は発症後48時間以内に始めないと十分な効果が得られないので、ぜひ早期に治療を開始してほしい」とのことでした。

脳梗塞を再発していなければ、その時点で十分点滴治療は効いているといえます。

ぜひあきらめずに、医師を信じて、点滴治療を受けていただけたらと、心から思います。

 

この記事を書いた人 山村 真子 ( 脳神経外科の看護師 )

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